「自動車ディーラーの営業をやってみたいけど、仕事がきついってよく聞くしな~」という漠然とした不安を抱えている方は、たくさんいらっしゃると思います。
本記事をこうしてご覧頂いているあなたも、これからディーラー営業マンを目指そうとしている1人なのではないでしょうか?
ですが一口にきついと言っても、具体的にどんな業務がどれくらいきついのかを知るチャンスって中々ないと思います。
一方で挑戦する前に仕事のきつい部分が分かっていれば、「こんなはずじゃなかった!」というギャップは生まれませんし、心構えができるはず。
そこで今回は僕の学生時代の先輩で、現役自動車ディーラー営業マンとして活躍するS先輩に、仕事のきつい部分について取材をしてきました!
実際に働いていないと分からない、ディーラーの営業として働くきつさを赤裸々に語って頂けましたよ。
- ディーラーの営業がきついと感じる7つの理由
- 現役ディーラー営業マンが実際にきついと思う仕事内容
- ディーラーで営業として働く上での注意点
- 営業としてこなさなければいけないノルマの実態
- 営業のきつさは車の販売業務だけじゃないということ
※本記事は、ディーラー営業マンへの転職を考えている方向けの内容となっています。該当しない方は、読み進めても有益な情報を得られない可能性があります。また本記事における情報は、S先輩への取材内容や口コミ情報をもとに構成していますので予めご了承下さい。
S先輩の経歴を簡単にご紹介
出身:愛知県
年齢:30代後半
勤務先:トヨタ系ディーラー/勤続10年以上
役職:係長
ディーラーの営業がきつい7つの理由を現役営業マンに取材!

営業のきつさと言えば、ほとんどの方が「数字などのノルマが大変そう」と思いつくのではないでしょうか?
もちろんそれも正解ですが、今回、現役ディーラー営業マンとして活躍するS先輩に取材してみたところ、ノルマだけじゃないきつさが見えてきました!
まずはS先輩にあげてもらったディーラーの営業マンのきつさを簡単に紹介すると…
ディーラー営業マンはこれがきつい!
- ノルマ達成が当然という雰囲気
- 書類関連の雑用が大量にある
- お客さんとのトラブル
- 納車前の準備
- 車屋なのに車以外の商品販売
- サービスという名の自腹
- 休日返上でナンバー登録
ざっとあげるだけでも、こんな感じでたくさんあります(笑)。
では、具体的なディーラーの営業として働くきつさについて、詳しく説明させて頂きましょう!
ディーラーの営業はノルマ達成が当然の空気がきつい
![ディーラーの営業はノルマがきつい]()
営業ならどんな商材を扱う場合もついてまわることですが、やはりノルマがきついみたいです。
ただ、僕は営業募集の求人原稿を制作することもあるのですが、よく「ノルマはありません!」と書いています。
あれって実際のところどうなんですか?ノルマがないってありえるんですか?と質問してみたところ…
![]()
S先輩
俺も新卒で入社するときは、会社説明会で「ノルマはありません!」って聞いてたよ(笑)
![]()
フカガワ
え、えぇぇぇーーーーーーーーーー!!!
ノルマはないと聞いて入社したのに、今はノルマがきついってどういうことですか?
![]()
S先輩
入社してみたらたしかにノルマはなかったけど、目標ってのがあってさ、目標=ノルマって感じだったよ(笑)
なるほど、そういうことですか。
確かにノルマにしろ目標にしろ、営業会社である以上は必達数字の設定があって当たり前ですよね。
でも、ノルマができて当たり前の空気ってどんな感じなんでしょう?
![]()
S先輩
「親兄弟、親戚に頼んででも買ってもらえよ!」って言葉が飛んでくるくらい、“できないはありえない”って空気感かな(笑)
![]()
フカガワ
ディーラーの営業マンって思ってる以上にきついんですねぇ…
ノルマ達成のためなら「身内に頼み込んででも!」という言葉が出るほどとは驚きましたね。
達成が当たり前というよりは、S先輩も言っていたように“できないという選択肢はない”といった感覚に近いのかもしれません。
しかしノルマについてS先輩によると…
![]()
S先輩
ノルマはたしかにきついけど、達成したら最高なんだよ!
お店のメンバーみんなで「やったぜ!」って喜んだりさ。
普段は厳しい店長も、達成したら優しいしな(笑)
必死になった分だけ、乗り越えたときのあの解放感ったらないよ!
ノルマがきついことは間違いないようですが、その先にある達成感が先輩を突き動かしているみたいですね。
だらだらと働くよりは、締めるところは締めて緩むところは緩む!そんな志向を持っている方にはオススメできそうです♪
膨大な書類処理が営業を苦しめる
![膨大な書類処理が営業を苦しめる]()
S先輩が言うには、車を売った後にお客さんからもらうべき書類がとにかくたくさんあるんだとか。
ざっとあげてみるだけでも…
ディーラー営業マンが処理する書類の一例
- 新車注文書
- 登録委任状
- 保管場所証明書
- 下取り委任状
- 自賠責譲渡証
- 割賦契約書
- トヨタカード申込書
- JAF入会申込書
- 自動車保険加入申込書
S先輩はまだまだ難しい名前の書類をたくさん言ってましたが、上記の書類だけでも十分多さは分かってもらえますよね(笑)?
でも、きついのは書類の多さだけではなくて…
![]()
S先輩
必要書類はどれも印鑑が必要なんだけど、印鑑って認め印とか実印とか銀行印とかいろんな種類があるだろ?
あれを間違えると、もらい直さなきゃいけないから大変なんだよ(泣)
![]()
フカガワ
もらい直すって言っても、すぐにはもらえませんよね?
![]()
S先輩
そう、その通り!
日を改めてこっちからお客さんの家まで直接行くこともあるんだ。
書類を早く回さないと納車が遅れてトラブルのもとになるから、後回しにはできないんだよな~。
「こんなにも膨大な量の書類処理よく覚えられましたね~」とS先輩に言ったら、「新人の頃に叩き込まれたからなんとかな(笑)」と一言。
営業というと数字を達成させる部分にばかり目が行きがちですが、実はこうした見えにくい地味なきつさもあるみたいです。
細々としたルールに則って物事を進めることが得意な方であればいいでしょうが、そうでない方は覚悟しておいた方が良さそうですね。
お客さんとのトラブルはメンタル的にきつい
![お客さんとのトラブルはメンタル的にきつい]()
S先輩が一番きつそうに語っていたのが、このお客さんとのトラブルについてでした。
新車の購入となればかなりの金額が動くことになる訳ですから、トラブルが起こりやすいのも分かりますが、具体的にどんなトラブルが起こるのでしょうか?
ディーラー営業マンにありがちなトラブル
- 納車予定時期のズレ
- 成約後の後出しジャンケン
- 連絡する頻度
- 過度なサービスの要求
S先輩が話してくれたものを並べてみました。
納車予定時期のズレ
ディーラーのシステムで、新車の成約時にざっくりの納車予定時期が分かるようになっているみたいです(○月上旬など)。
でもこれはあくまでも予定らしく、生産工場の都合など営業マンが操作できない要因によって前後することもあるんだとか。
S先輩いわく、前にずれ込む分にはまだいいらしいのですが、後ろにずれ込むときが大変らしいです。
![]()
お客さん
今月中には納車されるって言ってましたよね(怒)!?どうしてくれるんですか???
こういうお客さん、実際にいるらしいです。
![]()
S先輩
申し訳ありません!工場での生産が追い付いていないみたいでして…
![]()
お客さん
そんなことウチには関係ない!1台くらいなんとかしてよ!
早く新車に乗りたい気持ちは分かりますが、これはなんとも心が痛くなりますねぇ(涙)。
時にはこうした理不尽な訴えにも耐える、忍耐力が必要になるということでしょう。
成約後の後出しジャンケン
車種、グレード、オプションなど、全部を確認した上で成約となる訳ですが、まれに成約後に「あれも付けといて!金額はそのままで!」というお客さんがいるそうです。
S先輩が言うには、成約後の内容変更は僕らが思っているほど簡単なことではないそう。
かと言って、「それはできません」とストレートに伝えたらお客さんは怒るだろうし、なんとかオブラートに包みながら伝えるしかないんだとか。
こうしたお客さんとの折衝は、自動車ディーラーで働く営業に限ったことではありませんが、きついですよね。
連絡する頻度
ディーラーの営業を目指すなら、これは特に注意した方がいいとS先輩が教えてくれました!
![]()
S先輩
納車まで半年近くかかるお客さんがいるとしたら、どれくらいの頻度で連絡を取るのが正解だと思う?
![]()
フカガワ
そうですねぇ、月に1回くらいのペースでいいんじゃないですか?
![]()
S先輩
全然ダメ!週1回、最低でも2週に1回は連絡しないと!
![]()
フカガワ
えっ、そんなに必要ですか?
![]()
S先輩
お客さんは自分の車がどんな状態なのか分からないからな。
工場のラインに乗っているのか?ナビを付けているところなのか?
些細なことでも教えてあげないと、不安になっちゃうんだよ。
納期がかかるケースほど、しっかり連絡をとっておかないと!
このあとS先輩が教えてくれたんですが、過去にお客様のアンケートで「担当の○○(S先輩の名前)は、納車まで全然連絡もしてこず不安だった」と書かれてしまったことがあったんだとか。
定期的に連絡は取っていたつもりだったみたいですが、お客さんはそうじゃなかったみたいです。
相手のことを考えた細やかな気遣い、おせっかいすぎるくらいのコマメな連絡、これは必須スキルと言えそうですね!
過度なサービスの要求
数百万円単位のお買い物をするので、「これくらいならいいでしょ?」というテンションのお客さんは多いみたいです。
![]()
フカガワ
S先輩、例えばどんなむちゃぶりがあるんですか?
![]()
S先輩
「納車はガソリン満タンにしておいてね」が割とあるかな。
![]()
フカガワ
ガソリンですか。それくらいなら簡単そうですがぁ…
![]()
S先輩
実は納車時に給油できるガソリンの量は決められてるんだよ!
だから「今回だけ満タン」なんてしたら、すぐにバレちゃう(笑)
1台だけで見れば数千円だけど、会社全体で見たらぁ…
ガソリン代だけで数百万以上の費用がかかってくるからね!
S先輩は過去に、規定通りの量を給油して納車したところ、「新車なのにこんなガソリンの量で納車なの?」と嫌な顔をされてしまったことがあったそう。
「事前に説明していなかった俺が悪かった…」とS先輩が言っていたように、業界では当たり前のことが相手にとっても同じとは限りません。
説明すべきことはしっかり事前に伝えておくことが大切なようです。
ちなみにS先輩は、オリジナルの確認事項シートを用意しているらしく、“言った言わない論争”に発展しないように努めているらしいですよ!
納車前の準備もディーラー営業マンの仕事
![納車前の準備もディーラー営業マンの仕事]()
納車のときって、車ピカピカですよね。
あれって工場から出荷されるときにキレイにしてるのかな~と思い、S先輩に聞いてみると…
![]()
フカガワ
納車のとき車ってピカピカですけど、洗車してくれるスタッフさんがいるんですか?
![]()
S先輩
いない!少なくともウチのディーラーは、担当営業マンが1台1台洗ってるよ(笑)
![]()
フカガワ
1台1台!?あ、でも洗車機があるからスグですよね?
![]()
S先輩
あまい!神経質なお客さんもいるから手洗いの時だってあるんだぞ!
![]()
フカガワ
それは時間かかっちゃいますね~。
![]()
S先輩
時間がかかるだけじゃないんだって!
夏はめちゃめちゃ暑いから汗だくになるし、冬は手が凍るかと思うくらい冷えるからきつい!
しかもこれ、スーツ着たままやるんだぞ(笑)!?
てっきり洗車するアルバイトさんでも雇っているのかなと思いきや、まさかの営業さんによる手洗い洗車でした!
ちなみにS先輩に「夏と冬ならどっちがきついですか?」と聞いたところ、冬の方がきついと言ってました。
冬の洗車がきつい理由
- 洗車しても朝には霜がおりてしまうから
- 洗車しようと水・お湯をかけると表面で水分が凍ってしまうから
これもお客さんの目には触れにくい、でもとっても大切な仕事と言えるでしょう。
お客さんのために汗水たらして働ける、鋼の精神力がある方は心配なさそうですね!
自動車ディーラーなのに生命保険の営業もする
![自動車ディーラーなのに生命保険の営業もする]()
S先輩とはよく一緒にご飯へ行かせてもらうんですが、以前久々にお会いしたときにこんなことがありました。
![]()
S先輩
フカガワってさ、生命保険とかちゃんと入ってる?
![]()
フカガワ
一応入ってますけどぉ…、ってあれ?先輩いつから生命保険の営業に転職したんですか?
![]()
S先輩
転職してねーよ(笑)!
今さ、会社から生命保険の獲得してこいって言われてんの!
![]()
フカガワ
え、自動車ディーラーなのになんでですか?
![]()
S先輩
リアルな話をすると、保険会社からウチへのバックマージンが出るからだよ。
今の時代、車屋が車だけ売ってても儲からないんだとさ(涙)。
結局僕はS先輩から保険に加入することはなかったんですが(笑)、車以外にも営業しなきゃいけないなんて驚きましたね。
あくまでも生命保険はほんの一例にすぎません。
S先輩から仕入れてきた情報によると、ディーラーの営業マンは他にも…
ディーラー営業マンが販売する商品
- 自動車保険
- JAF(ロードサービス)
- 携帯電話
- クレジットカード
- 車検・点検
これだけの商品を扱っているそうです。
S先輩が何よりきついと言っていたのは、これら全ての商品に対しても毎月ノルマが課せられているという点でした。
ディーラーの営業マンだから車の販売に集中していればOK!という訳ではなかったんですね。
ちなみにS先輩の所属するお店で携帯電話の販売イベントを行った時は、3日間で60台近く売ったそうです(笑)。シンプルにすごい!
逆に上記のどれかを扱っている営業マンなら、困ることはないかもしれませんよ!
表向きはサービスでも実際は自腹
![表向きはサービスでも実際は自腹]()
S先輩とご一緒させて頂くときは、ありがたいことに毎回先輩のおごりなんです。
でも、過去に一度だけ僕が支払ったことがあったんですが…
![]()
S先輩
すまん!今日だけここ払っといてくれんか(涙)?
![]()
フカガワ
いつも払ってもらってばかりなんで全然いいですけど、なにかあったんですか?
![]()
S先輩
いや今日お客さんが急に、「希望ナンバーをつけたい」って言いだしてさ~。
「サービスでつけといてね!」って電話すぐに切られちゃって…。
しょうがないから自腹で手続き済ませたら、お金なくなっちゃって(涙)。
![]()
フカガワ
電話かけ直して、「有料です!」って言えばよかったじゃないですか!
![]()
S先輩
それでグチグチ文句言われるのも嫌だろ(笑)?
超高額って訳でもないし、これで丸く収まるならいいかな~ってなるんだよ。
営業マンが自腹を切るってのはよく聞きますが、身近なS先輩までそうだったとは(涙)。
トラブルやクレームを防止するためとはいえ、僕ならお客さんに「できません!」って言っちゃいそうです。
ちなみにS先輩によると、よくある自腹のパターンは、
- 希望ナンバー
- TVキャンセル(走行中にテレビ視聴できるようにするもの)
が多いそうです。
別のお店にいたS先輩の同期は、スタッドレスタイヤで自腹を切ったこともあったんだとか(驚)!
もちろん本来は有料のサービスな訳ですから、できないことはできないと伝えられる方なら問題はないでしょう。
休日返上で働くのがきつい
![休日返上で働くのがきつい]()
ノルマと休日の関係性ってあまりなさそうに感じますが、ここにも自動車業界ならではのきつさがありました。
![]()
フカガワ
そういえば、先輩って月曜日お休みでしたよね?
なんで先週の月曜日は仕事してたんですか?
![]()
S先輩
登録台数のノルマが達成できてなかったから、登録しに行ってたんだよ。
![]()
フカガワ
登録のノルマ?車が売れたらOKなんじゃないんですか?
![]()
S先輩
たしかに売るのも大切なんだけど、俺たち営業マンは登録しないと実績にならないんだ。
登録ってのは簡単に言うと、車のナンバープレートを取得することだな。
![]()
フカガワ
へぇ~、それは知りませんでした!
それって愛知県でできるんですか?
![]()
S先輩
もちろん!ただし、お客さんが愛知県に住んでる人だったらな(笑)。
三重や岐阜に住んでたら、その県の陸運局ってところまで車を持ってかなきゃダメなんだ。
ちなみに俺は最長で、兵庫県までなら車を持っていったことあるぞ(笑)!
![]()
フカガワ
兵庫!?どんだけ時間かかるんですかそれ…
自動車ディーラーで働く営業マンには、販売台数のほかに登録台数のノルマもあるそうです。
とくに月末は実績の締めになるので、休日返上で登録に走り回ることも増えるんだとか。
ただし会社に出向くことはないので、S先輩は私服で動いてるらしいです。
普段からドライブが好きって人なら、休日はともかく、苦にならないかもしれませんね。
まとめ
今回は現役ディーラー営業マンであるS先輩のおかげで、とってもディープな部分まで紹介することができましたね。
『きつい、きつい』と聞いているだけではイメージが浮かばないと思うので、役に立つ情報をお届けできたのではないかと思います。
S先輩に取材をさせて頂く中で印象的だったのは、仕事のきつい部分の話を聞いているはずなのに、とても楽しそうに話してくれたことでした。
ディーラーの営業マンという仕事柄タフな部分も多いですが、それだけ毎日が充実している証拠だったのかもしれませんね。
ただなんとなく毎日をやり過ごすのではなく、多少の荒波を乗り越えながら働きたい。
そんな方にピッタリな仕事だったように思います。