これまで日本経済の発展に大きく貢献してきた建築・土木業界。
現在も至るところでビルや商業施設、宿泊施設の建設が行われるなど、需要の高まりは皆さんも感じているのではないでしょうか。
そんな業界の発展とは裏腹に、『労働時間が長い』『休日が少ない』といったネガティブなイメージがあるのもまた事実。
ですが今、そんな建築・土木業界が大きく変わろうとしています!
今回は実例を交えつつ、その変化をお伝えします。
目次
あなたは現場仕事にどんなイメージがありますか?
この手の質問でよく聞こえてくるのは、
『重労働ばかりで大変そう』
『休暇が少なく働き詰めのイメージ』
『時間外労働で遅くまで働いていそう』
といった具合に、ネガティブな印象がほとんど。
どれも間違いではありません。
なぜそんなイメージを持たれてしまうのか?これにはちゃんとした理由があります。
まず考えられるのが、これまでの建設業界を支えてきた人たちの引退です。
いわゆる『団塊世代』の方々の多くが、これに当てはまります。
働き手が減るということは、当然残された人間の一人当たりの業務量は増加するわけです。
それに拍車をかけるのが、老朽化したインフラの改修工事。
現在日本に存在する道路や橋、トンネルなどのインフラの中には、1960年代の高度経済成長期に建設されたものが多くあります。
一般的にこれらインフラ設備の耐用年数は50年程度と言われており、まさに今、耐用年数を超える設備が続出し始めているのです。
人手は減少傾向にある中で、施工案件は増加し続ける。
このアンバランスが、建築や土木工事業界に暗いイメージをもたらしている要因の一つと言えるでしょう。
しかしこれらの問題に対して、何も対策がなされていない訳ではありません。
次はその対策について、のぞいてみたいと思います。
建築・土木の世界でも始まった働き方改革。
最近はその言葉自体もかなり浸透してきた『働き方改革』。
- 長時間労働の是正
- 正規・非正規の不合理な処遇差の解消
- 多様な働き方の実現
という3つの柱が基本的な考え方です。
これはあくまでも国全体としてのおおまかな方針。
では建築や土木といった現場関連の仕事はどうでしょうか。
実は、『建築業働き方改革加速化プログラム』という独自の施策が示されているんです。
現場で働く人たちのための3つの改革!
そんな『建築業働き方改革加速化プログラム』の、具体的な内容を見ていきましょう。
週休2日制の導入を後押し
こちらは文字通り休日を確保するための取り組みです。
公共工事・民間工事ともに、週休2日の工事を大幅に拡大する動きが始まっています。
休日増加によって発生する労務費などは、見直しが実施され必要経費として計上。
また広く浸透させるために『適正な工期設定ガイドライン』も改訂されるなど、積極的な協力要請が行われています。
今後この取り組みがさらに定着すれば、“休めない”“休日が少ない”といった問題は解決できそうですね。
スキルにふさわしい評価・待遇
『建築キャリアアップシステム』というものをご存知ですか?
これは技術者の能力を正しく評価するための、ものさしのようなものです。
建築技能者が資格や就業履歴を登録し、情報を蓄積していくことで、正しい評価を実現します。
“頑張っているのに報われない…”“今月の給料たったこれだけ!?”
とガッカリすることも少なくなっていくでしょう。
さらに、社会保険未加入の企業へは建築業の許可更新を認めない制度が構築。
福利厚生の拡充により、長く安心して働ける会社と出会うチャンスも増加しています。
ムダをなくして生産性アップ
近年では建築・土木業界においても、ICT(情報伝達技術)が導入され始めています。
ICTというと聞こえは難しいですが、公共交通機関で使用するICカードやネットショッピング、銀行のATMなど、僕たちのあらゆる生活シーンで活用されているものです。
そんなシステムがどう活かされているかというと、主に勤怠管理や施工管理などで活躍しています。
書類作成の負担軽減や品質向上など、あらゆるムダの省略にひと役かっている訳です。
例えばこれまで1時間はかかっていた面倒な書類仕事も、ICTの導入であっという間に完了!
“雑務で遅い時間まで働きづめ”なんてこととはお別れです。
いかがでしょうか?
『時間外労働で大変そう』『休みなく働かなくちゃいけない』
そんなイメージは変わってきたのではないでしょうか。
改革を進めた企業の声をお届けします!
それでは実際に働き方改革に乗り出した企業の、現状をのぞいてみましょう。
取り組み事例① 休まない風土・意識からの脱却に成功した企業
こちらの企業は施主に協力を得たうえで、週休2日の工事スケジュールを組み、試験的に導入したそうです。
時間が限られた環境に置かれたことで、積極的にITツールを活用するようになり、スピーディーに効率化が実現できました。
結果的に残業時間の削減にも成功!生産性もアップし、社員も会社も大きなメリットを手にすることとなりました。
取り組み事例② 経験の浅い社員が、まるでベテランのようになった企業
ベテランスタッフの技術やノウハウに頼りがちなこの業界。
そんな流れを変えてしまったのが、こちらの企業です。
これまでベテラン社員が行ってきた業務を、ICTの活用によって機械化しました。
これによって経験が少ない社員でも施工できる範囲が拡大し、生産性の向上に繋がりました。
注目すべきはICTの活用とともに、外部講師による講習会を開催しているところです。
社内教育を積極的に行ったことも、成功の一因と言えるでしょう。
取り組み事例③ 手間もミスも確実に減少させた企業
情報共有アプリを導入したこちらの企業では、現場監督と業者との情報共有にかかる手間の削減に成功。
なんと1日あたり3~4時間もの短縮になったそうです!
具体的に掘り下げていくと、電話の回数は約50%削減、現場へ足を運ぶ回数も25%近く減少させることに成功していました。
またアプリ内で情報を共有することで、伝達ミスが起こりにくく、手戻りや誤発注といったミスが減りました。
導入にはおよそ1年を要したとのことですが、今では粗利率も上昇。
となれば、社員への還元が増加することだって考えられますよね!
取り組み事例④ 積極的に社員に休んでもらっている企業
『有給はあってないようなもの』そんな経験をした方もいるかもしれませんが、こちらの企業はその真逆です。
新入社員であっても年間10日間の有給を付与したり、年間5日以上の有給取得を義務化していたりと、とにかくしっかり休むことを推奨しています。
ほかにもリフレッシュ休暇をはじめとした、特別休暇を設けるなど徹底した取り組みでした。
さらにノー残業デーや勤務時間インターバル制を導入し、労働時間の削減にも着手。
打刻と申告の時間にズレがある時には、社員へのヒアリングも行っていました。
もはや『休めない』『拘束時間が長い』は時代遅れ!
建築土木業界では、これまでの悪い慣習を打開すべく取り組みが行われていますし、多くの企業がそれを実践しています。
かつてのネガティブな印象は、もはや時代遅れといっていいのではないでしょうか。
仕事のイメージだけで判断するのは、あまりにももったいない!
しっかり業界や職種の知識を身に付けた上で、あなたにピッタリの仕事と出会って頂ければと思います。